ユキカゼ「見よイチロー、ここから見える景色を」
ユキカゼ「私の足元には、私のやることに賛同し、集まってきた多くの兵がおる‥」
ユキカゼ「ここから見える誰もが、家族や守りたい大切な物を持っておるのじゃ‥」
リア「あはは、ゴロゴロゴあはははは」
一郎「死体の山と一緒に転がりながら笑ってるぞ……あいつ、狂ってるのか? 安全が確保できる地点まで後退しろ! 大量に転がってくる生首から距離を取れ」
リア「あははは、はは、はははは、ああああああっ」
一郎「おい、しっかりしろ」
メルティナ「うっ……うぅ……」
メルティナ「なんだか…身体がフワフワしてあたたかい……あれ? あっちの明るい光は……」
一郎「──ッ、そっちに行くな! 川を渡った先はあの世だぞっ!!」
ユキカゼ「それは食用ヌーミンのクワッツ・ハポーナじゃ…」
一郎「ヌーミンとはなんだ?」
ユキカゼ「メニューに絵が描いてあるじゃろう? それがヌーミンじゃ」
一郎「…二足歩行の河馬…か? およそ人の食い物とは思えない容姿だが…ヒリッピンでは日常的に食うものなのか?」
メルティナ「──♪ ──♪ ──♪」
竜兵A「メルティナさんの歌には、こんな力が?」
竜兵B「すげぇ…すげぇすげぇ! 人魚の歌ってやつにはここまでの力があったのか!」
一郎「よし、今のうちに戦線を押し上げるぞ! メルの歌声が聞こえている間は、後ろに弾の一発、弓矢の一本も通すなよっ!!」
ユキカゼ「‥ふーむ‥どうじゃ? イチロー」
一郎「髪の色に対して派手過ぎる。もう少し落ち着いた色にしたらどうだ?」
ユキカゼ「他の色は?」
店員「他には、オレンジ、ピンク、ブルー、グリーンが御座います。ご試着なされますか?」
ユキカゼ「イチロー、何色がよいと思う?」
ユキカゼ「…おい人間、生きておるのなら返事をせい…」
ユキカゼ「…死んでおるのか?」
ユキカゼ「…おぅ、生きておったか。じゃが砂漠の毒は人間に有害じゃ、このまま寝ておればいずれ死ぬぞ?」
サイラス「竜族には過去、その出自を名目に他種族を圧した前科がある。種族間の軋轢というものは、世代が交代した位で消えてなくなるものではない」
サイラス「そんな竜族の姫が、今更愛だ正義だと口にして一人奔走したところで簡単には耳も貸すまい。そういった者達は、愛や正義こそが争いの根源であることを知っているのだ」
フラン「大体、姐さんは納得してるんスか? 他所から来た新参者に部隊を任せるなんて」
ペトラ「それを言うなら私やエレンとて、元は別部隊の生き残りだ、最初から貴様らの隊長だった訳ではない」
一郎「せっかく種を持ってきたんだがな」
リア「では……それを埋めるです。また美しい花壇にするように頑張るです」
リア「穴を掘って埋める、という行為に縁があるみたいです。ずっと、繰り返しているです」
メルティナ「──痛っ、た! ちょっ、縄がキツすぎるってば…」
柄の悪い男A「仲介屋が来るまでの間だけだ、我慢しろ」
柄の悪い男B「…しかし、見れば見るほどエロイ身体だな…これまで、何人の男と寝てきたんだ?」
ユキカゼ『こんがりと丸焼きにして! 頭からバリバリと食ろうてやろうかっ!』
一郎「…こいつぁまた随分と大きく出やがったな。トカゲに化けるとは何事だ!! 非常識にもほどがあるぞヒリッピン人!!」
ユキカゼ『…なんなのじゃぁ…オマエは…?』
一郎「おう、リンシンのオッサン。ちぃと油断し過ぎじゃねぇのか?」
リンシン「若僧! その得物はどうした!?」
一郎「これだけ敵の数が多いと素手ゴロはしんどかろう。トカゲの姫様に返してもらった」